この記事でわかること
- メンバーが大切にしていることを見つける3つの手がかり
- 「大切」と仕事をつなぐと何が変わるか
- 忙しくて大切が見えなくなったときの立て直し方
- 3人のメンバーで実際に起きた変化
経歴、役割、スキル。マネージャーとしてメンバーのことをそれなりに把握しているつもりでいます。でも「この人が本当に大切にしていること」となると、意外と知らないものです。
ぼくのチームで起きた変化のいくつかは、メンバーが大切にしていることに気づいたことがきっかけでした。
メンバーの「大切」を知ると、何が変わるのか?
あるシニアメンバーはデザイン制作の仕事を大切にしていました。別のメンバーはなんでも相談しあえる仲間の存在を大切にしていました。また別のメンバーは、新しいことを学んで会社に貢献することを大切にしていました。
それぞれの「大切」に気づいて、仕事を通じて一緒に大切にしていった結果、力強く、意欲的に仕事に向かってくれるようになりました。まるでスイッチが入ったかのように前進していく感じです。
メンバーの「大切」を見つける3つの手がかり
① 考えるのではなく、感じてみる
大切は頭で考えて出てくるものではなく、心で感じるものです。リラックスした場で、自分や相手が何に心を動かされているかを感じてみてください。
② 普段の言動にヒントがある
メンバーが何に時間を使っているか、どんなときに目が輝くか、どんなときに不満を口にするか。大切にしていることは、普段の言動の中に表れています。
③ 壁にぶつかったときに見える
自分にとっての大切に気づくのは、壁につきあたったり、違和感を感じたり、疲弊してしまったときが多いものです。メンバーが困っているときこそ、その人の大切が見えるチャンスです。
「大切」と仕事をどうつなげるか?
大切にしていることがわかったら、それと仕事がつながるように工夫します。
デザイン制作を大切にしているメンバーには、チーム内のデザインアドバイザーになってもらいました。新しいことを学びたいメンバーには、デジタル業務の学習環境を整えました。仲間を大切にしているメンバーには、チーム内のプロジェクトリーダーを任せました。
「大切」と仕事がつながると、メンバーは主役として動いてくれます。指示で動かすのとは全く違う力強さです。
余裕がなくなると、大切が見えなくなる
とはいえ、いつもうまくいくわけではありません。ぼく自身、忙しくて余裕がないときは、メンバーの大切を意識できずに「やってほしいこと」だけを伝えてしまうことが増えます。
これが続くと、メンバーの反応や空気が露骨に悪くなり、コミュニケーションの生産性が落ちていきます。幸い、ぼくのチームメンバーは態度や発言に出してくれるので、「あ、まずい、何かズレてるぞ」と気づけます。
そんなときは大切に焦点を当てながら仕切り直します。この人が大切にしていることと、今目の前で起きていることは違うよな、と。
違いを大切にすると、心はひとつになる
ぼくが大切にしている言葉があります。
「お互いの違いを大切にするとき、みんなの心は1つになる」
ずいぶん前に、ある大先輩からいただいた言葉です。当時は意味がよくわかりませんでした。違いを大切にすると、ひとつになる? 矛盾しているように聞こえます。
でも今は実感として腑に落ちています。「違い」とは「それぞれの大切」のことです。一人ひとりの大切を一緒に大切にしていくとき、初めて心がつながり、ひとつになるのだと感じます。
組織やビジネスの場では、個人の大切を大切に扱うことが後回しにされがちです。組織のルールや成果を出すことが優先されて、個人の大切は二の次、三の次になってしまいます。でも、メンバーが大切にしていることと仕事がつながったとき、組織としての成果も大きくなることをぼくは何度も経験しています。
大切とつながると、大変さにもふんばれる
大切にしていることと仕事がつながっていると、大変な状況でもふんばりがきくようになります。
仕事をしていれば大変なことは日常的にあります。一生懸命やっても報われないこともあります。周囲からの要請だけで大変さに取り組むと疲弊してしまいます。でも、ほんの少しでも自分の大切が織り込まれていれば、大変さに対処することに満足を感じたり、最後までやり抜く力が湧いてきたりします。
ぼく自身も、仕事そのものが特別好きなわけではないし、やりがいを感じることはそれほど多くありません。だけど、仕事を通じた人との関わりが好きです。メンバーの一生懸命さ、優しさ、弱さ、勇気、潔さ。人の機微に触れるたびに、感動したり、奮い立ったりしながら仕事を続けています。それがぼくの「大切」であり、仕事を続ける力の源です。
明日からできること
次の1on1や雑談で、ひとつだけ観察してみてください。そのメンバーが、どの話をするときにいちばん言葉が増えるか。
そこに大切があります。聞き出す必要はありません。気づいたら、その大切が活きる仕事をひとつ渡してみる。それだけで動きが変わります。
実際の職場では、どう使われたのか
考え方だけを読んでも、明日の職場でどう動けばいいかは、なかなか見えてきません。ここまでの話が実際の現場でどう使われたのかを、連載にまとめています。
メンバーが大切にしていることを一緒に大切にした話は、No.11 メンバーの「大切」を、一緒に大切にするにあります。「好き」を仕事につなげた話は、No.3 メンバーの「好き」を仕事につなぐマネジメントも。
よくある質問
Q. 「大切にしていることは何?」と直接聞いてもいいですか?
聞いても答えが返ってこないことが多いです。大切は本人も言葉にできていないことがあるからです。だから3つの手がかり(感じる、普段の言動、壁にぶつかったとき)から、一緒に言語化してみましょう。
Q. メンバーの大切と組織の目標が合わないときは?
目標そのものを変える必要はありません。目標を達成していく道筋のなかに、その人の大切を組み込むのがコツです。目標が同じでも、道が変われば進み方は変わります。
Q. 大切を大切にすると、わがままを許すことになりませんか?
別のものです。わがままは「やりたくない」という主張ですが、大切は「これを守りたい」という願いです。願いのほうに目を向けると、仕事とつなげる方法が見えてきます。

