「1on1で何を話せばいいかわからない」「メンバーに何度言っても伝わらない」。マネージャーやリーダーなら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
ぼく自身、長い間この壁にぶつかっていました。でも対話のやり方をほんの少し変えただけで、メンバーとの関係が目に見えて変わり始めたのです。
この記事では、解決志向をベースにしたチーム対話のコツを、ぼくの実体験とともにお伝えします。
チームの対話がうまくいかないのはなぜ?
多くの職場で、対話がうまくいかない原因は共通しています。それは、「できていないこと」の指摘から会話が始まるということです。
「あの件、まだ終わってないよね?」「このミス、なんで起きたの?」。こうした問いかけは、相手を守りの姿勢に追い込みます。すると本音が出なくなり、対話は表面的なやりとりで終わってしまいます。
ぼくらは仕事の場面で「問題を指摘して改善を求める」コミュニケーションに慣れすぎています。それが悪いわけではありませんが、指摘だけの対話は、相手のエネルギーを奪います。
もうひとつよくあるのが、「アドバイスしすぎる」ことです。メンバーが相談に来たとき、すぐに答えを出してしまう。それはリーダーとしての責任感からくるものですが、メンバーが自分で考える機会を奪ってしまうことにもなります。
「認める言葉」がチームを変える理由とは?
対話を変える一番の鍵は、「認める言葉」を意識的に使うことです。
認める言葉とは、相手のがんばりや工夫、やれていることを言葉にして伝えることです。ほめるのとは少し違います。特別な成果を称えるのではなく、あたりまえにやれていることを「ちゃんと見ているよ」と言葉にするのです。
たとえば、こんな言葉です。
「毎朝、チームに声をかけてくれてるよね」
「あの資料、わかりやすかったよ」
「忙しい中でも期限を守ってくれて助かってる」
どれも特別なことではありません。でも、多くの人はこうした「あたりまえ」を言葉にしてもらった経験がほとんどないのです。
認める言葉が増えると、メンバーは「この人は自分のことを見てくれている」と感じます。心理的な安全が生まれ、本音が出やすくなり、報連相が自然と増えていきます。
ぼくのチームでも、認める言葉を意識し始めてから、メンバーの表情が変わりました。ミーティングでの発言が増え、「こうしたらどうですか?」という提案が出てくるようになったのです。

1on1で何を話せばいいのか?
「1on1をやっているけど、毎回雑談で終わってしまう」「メンバーも『特にないです』と言うだけ」。そんな悩みをもつリーダーは多いです。
解決志向の1on1では、「最近うまくいったこと」から話を始めます。
「最近の仕事で、ちょっとでもうまくいったなと思うことはある?」
この問いかけひとつで、対話の方向が変わります。問題の話から入ると「何がダメだったか」の報告になりますが、うまくいった話から入ると「自分は何ができているか」を自分で確認する時間になるのです。
そこから本音が自然に出てくることがあります。「実はあの件、うまくいったんですけど、別のところで悩んでて…」というふうに、安心できる対話の流れの中で、本当に話したいことが出てくるのです。
1on1で使える3つの質問
①「最近うまくいったことは?」
まずはうまくいっている話から始める。これだけで対話の空気が変わります。
②「それ、どうやったの?」
うまくいった方法を本人に言語化してもらう。自分の工夫やチカラを自覚するきっかけになります。
③「次はどうしたい?」
未来に目を向ける質問。望む姿を一緒に描くことで、次の行動が自然と見えてきます。
メンバーとの対話でどんな気づきがあったか?
ぼくの実体験をふたつお話しします。
エピソード1:「人前で認めないでほしい」と言われた話
あるとき、メンバーの仕事ぶりをみんなの前で認めたことがありました。ぼくとしては良かれと思ってのことです。ところが後日、そのメンバーからこう言われました。
「あの、人前で言われるのは恥ずかしいので、できれば個別に言ってもらえませんか…」
はっとしました。認める言葉は、相手にとって心地よい伝え方で届けてはじめて意味があるのです。人前が嬉しい人もいれば、個別がいい人もいる。メンバー一人ひとりの「伝わり方」を知ることが大切だと学びました。
エピソード2:「いっしょに考える」が生んだ変化
以前のぼくは、メンバーが相談に来るとすぐに答えを出していました。「こうすればいい」「ああしてみたら」と。効率的だと思っていたのです。
でもあるとき、メンバーの一人がこう言いました。「正直、答えをもらうだけだと自分で考えなくなるんです」と。
それからは「教える」のではなく「いっしょに考える」ようにしました。「どうしたらいいと思う?」「今の段階でできそうなことは何かある?」と聞くようにしたのです。
最初は時間がかかりました。でも数ヶ月後、メンバーたちは自分で考えて動くようになり、ぼくに相談に来るときも「自分なりの案」を持ってくるようになったのです。
明日からできる対話の始め方は?
対話を変えるのに、大きな仕組みづくりは必要ありません。明日からできることを3つご紹介します。
① 会話の最初の一言を変える
「あの件どうなった?」の代わりに、「最近どう?うまくいってることある?」から始めてみてください。最初の一言が変わるだけで、対話全体の方向が変わります。
② あたりまえを言葉にする
メンバーが普段やっていることの中で、「助かっているな」と思うことをひとつ言葉にしてみてください。特別な成果でなくて構いません。「いつも丁寧にやってくれてるね」。その一言が信頼の土台をつくります。
③ 答えを出す前に質問すり
メンバーが相談に来たとき、すぐにアドバイスするのではなく、「あなたはどう思う?」と聞いてみてください。メンバーの中にある答えを引き出す対話が、チームの成長を加速させます。
よくある質問
Q. 認める言葉を使うと、甘やかしにならないですか?
認める言葉は「甘やかし」ではなく「事実の確認」です。できていることを言葉にするのは、お世辞でもご褒美でもありません。「この部分はうまくやれている」という事実を共有することで、メンバーは自分のチカラを自覚し、もっとよくしようという意欲が生まれます。
Q. 1on1でメンバーが「特にないです」としか言わないときは?
「特にない」は、まだ安心して話せる関係ができていないサインかもしれません。最初は雑談でもかまいません。焦らずに、こちらから「最近こういうことがあったんだけど」と自分の話を少しだけ開示してみてください。リーダーが自分を開くことで、メンバーも話しやすくなっていきます。
Q. 対話の時間が取れない忙しい職場でもできますか?
できます。認める言葉は30秒あれば伝えられます。すれ違いざまに「さっきの対応、よかったよ」と一言伝えるだけでも効果があります。大切なのは時間の長さではなく、「見ている」「気づいている」ということが伝わることです。
