「うちの職場、なんとなく雰囲気が重い」「言いたいことが言えない空気がある」「若手がすぐ辞めてしまう」。こうした悩みは、組織風土の問題かもしれません。
組織風土とは、目に見えない「職場の空気」のようなものです。制度やルールとは違い、なかなか言語化できないけれど、メンバーの行動や気持ちに大きな影響を与えています。
この記事では、ぼく自身がチームマネジメントの中で取り組んできた組織風土改善の実践方法を、解決志向の視点からお伝えします。
組織風土が悪いとどうなるか?
組織風土の悪化は、目に見えにくいからこそやっかいです。数字にはすぐ現れませんが、確実にチームのパフォーマンスを蝕んでいきます。
風土が悪い組織では、こんなことが起きています。
報連相が減る。「どうせ言っても意味がない」「叱られるだけ」と感じて、メンバーが口を閉ざしていく。
挑戦しなくなる。失敗を恐れて新しいことに取り組まない。「前例どおり」が最も安全な選択肢になる。
協力が生まれない。「自分の仕事だけやっていればいい」という空気が広がり、チームとしての力が発揮できない。
ぼくが以前いた職場でも、問題の原因追求が人に向くことが常態化していました。ミスをした人を責める。成果が出ない人を問い詰める。その結果、メンバーはミスを隠し、挑戦を避け、必要最低限のことだけやる組織になっていったのです。
問題さがしが過剰になると、組織の風土はめちゃくちゃ悪化します。こうした風土がもたらす悪影響は計り知れないものです。
組織風土を4つのタイプで整理するとどうなるか?
組織の風土を改善するには、まず現状を把握することが大切です。ぼくは組織風土を4つのタイプで整理しています。
タイプ1:問題追求型(後ろ向き × 個人に焦点)
「誰が悪いのか」「なぜできないのか」を追求する風土。メンバーは萎縮し、自己防衛に走ります。報連相は最小限になり、イノベーションは生まれません。
タイプ2:管理統制型(後ろ向き × 組織に焦点)
ルールと管理で組織を動かそうとする風土。秩序は保てますが、メンバーの自主性が育ちにくい。「言われたことだけやる」組織になりがちです。
タイプ3:成果偏重型(前向き × 個人に焦点)
個人の成果を重視する風土。一見活気がありますが、競争が過熱するとメンバー同士の協力が減り、チーム力が低下します。
タイプ4:協働成長型(前向き × 組織に焦点)
うまくいっていることに目を向け、チーム全体で成長していく風土。メンバーが互いの貢献を認めあい、挑戦を応援しあう。解決志向が目指すのは、このタイプの組織風土です。
あなたの組織は、いまどのタイプに近いでしょうか?多くの組織はタイプ1や2に偏りがちです。それを少しずつタイプ4に近づけていくのが、組織風土改善のゴールです。

解決志向で組織風土をどう変えていくか?
組織風土の改善は一朝一夕にはいきません。でも、日々の小さな関わり方を変えることで、風土は確実に動いていきます。
原則1:問題の原因追求を人に向けない
問題が起きたとき、「誰が悪いのか」ではなく「次にどうすればうまくいくか」を考える。この方向転換だけで、組織の空気は大きく変わります。
問題の原因追求が人に向いたとき、風土は最悪の方向に進みます。メンバーは失敗を恐れ、報告を隠し、責任を回避するようになる。逆に「次はどうしよう」という未来志向の対話ができると、失敗を学びに変える文化が生まれます。
原則2:うまくいっていることを言語化して広げる
チームの中には、すでにうまくいっていることが必ずあります。それを見つけて、言葉にして、チーム全体に共有する。
「あの対応がよかったのは、早めに情報共有してくれたからだよね。この方法、他の案件でも使えるんじゃない?」
こうして成功体験を言語化して横展開することで、組織全体の行動パターンがポジティブな方向に変わっていきます。
原則3:小さな変化をくり返す
組織風土改善で失敗しがちなのが、「一気に変えよう」とすることです。大きな改革を打ち出しても、現場がついてこなければ定着しません。
解決志向では、小さな変化をくり返すことを重視します。ミーティングの冒頭を「うまくいったこと」の共有から始める。報告に対して「ありがとう」を返す。メンバーのがんばりを言葉にする。こうした小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな風土の変化につながります。
風土が変わった実体験から学んだことは?
エピソード1:解決志向は周囲に広がっていく
ぼくが解決志向のマネジメントを始めたとき、最初に変わったのはぼく自身のチームでした。でも面白いことに、その変化は周囲のチームにも自然と広がっていったのです。
隣のチームのリーダーが「最近、あなたのチームの雰囲気がいいけど、何か変えた?」と聞いてきました。ぼくが解決志向の考え方を話すと、がちょっと試してみるよ」と言って、自分のチームでも認める言葉を使い始めたのです。
組織風土は、ひとつのチームが変わると、隣のチームにも影響します。良い風土は伝播するのです。だから、まず自分のチームから始めればいい。
エピソード2:良い変化をシェアしたら組織の見え方が変わった
組織風土改善に取り組み始めた当初、うまくいっているコミュニケーションを見つけてメンバーに共有するようにしました。すると、最初は「本当の問題に目をつぶっているんじゃないか」と懐疑的な反応を示すメンバーもいました。
そこで、ぼくは2つのアプローチを提示しました。問題の原因を探って排除していく方法と、うまくいっていることに目を向けて広げていく方法。それぞれの先に待っている組織の姿をメンバーと一緒に想像してもらい、どちらで進めるかを選んでもらったのです。
メンバーが自分たちで選んだやり方だからこそ、納得感をもって取り組めるようになりました。うまくいっているコミュニケーションをシェアし続けるうちに、良い変化への気付きが増え、メンバー同士の関わり方が変わっていったのです。
組織風土改善の実践ステップは?
ステップ1:現状の「うまくいっていること」を棚卸しする
チームの中で、すでにうまくいっていることをリストアップしてみてください。メンバーとのミーティングで「うちのチームの良いところって何だろう?」と話し合うのもおすすめです。問題点よりも先に、良いところに目を向けることで、チームの自信が生まれます。
ステップ2:認める言葉を日常に組み込む
毎日ひとつ、メンバーのがんばりを認める言葉を伝えることを自分のルールにしてみてください。朝礼、1on1、チャット。場面はどこでも構いません。認める言葉が日常になると、チーム全体の空気が少しずつ変わっていきます。
ステップ3:ふりかえりの場を前向きに変える
月1回のふりかえりで、3つのトーク(ゴールトーク・サバイバルトーク・プログレストーク)を取り入れてみてください。問題点の洗い出しだけでなく、「うまくいっていること」「少しでも進歩したこと」を話し合う時間をつくることで、チームのエネルギーが変わります。
ステップ4:小さな変化を記録して共有する
「先月より報連相が増えた」「メンバーから提案が出るようになった」。こうした小さな変化を見逃さず、チームで共有しましょう。変化を言語化して共有することで、「ぼくらは変わっている」という実感がチーム全体のモチベーションになります。
よくある質問
Q. 組織風土改善は管理職だけで取り組むべきですか?
最初のきっかけはリーダーがつくることが多いですが、風土改善は一人でやるものではありません。まずリーダーが自分の関わり方を変え、その変化にメンバーが気づき、自然と巻き込まれていく。この流れが理想的です。強制するのではなく、良い変化が自然に広がる環境をつくることが大切です。
Q. 風土改善に反対するメンバーがいたらどうすればいいですか?
まずは、その人の話をじっくり聞くことが大切です。ぼくが購買部で組織風土改善を進めていたとき、「風土改善なんて意味がない。面倒なことから目をそらして事なかれ主義でいくことですか?」という声があがりました。すぐにそのメンバーの話を聞きました。すると、職場で不公平感を抱えていて、「良いところだけ見ましょう」と言われても協力する気持ちになれなかったのです。じっくり話を聞くうちに、「もっとスキルアップして会社に貢献したい」という前向きな気持ちが出てきて、風土改善にも前向きに取り組んでくれるようになりました。
Q. 風土改善の効果はどうやって測ればいいですか?
数字で測りにくいのが組織風土ですが、いくつかのサインがあります。メンバーの発言量が増えた、報連相の頻度が上がった、ミーティングで笑いが生まれるようになった、退職者が減った。こうした変化が出てきたら、風土が良い方向に動いている証拠です。
組織風土改善、7つの心得
組織風土改善の実践から得られた学びを、7つの心得としてまとめました。
① 悪者をつくらない
問題解決型で組織風土改善を進めると犯人探しになってしまいます。メンバー間のコミュニケーションがギクシャクして、本来の目的である風土改善が悪化する可能性があります。取り組みを始める前に「このやり方は悪者をつくらないか?」とチェックしましょう。
② すでにあるものを使う
新しい会議体をつくると負担が増えて長続きしません。すでにある週次ミーティングや月次ミーティングの仕組みを活用して、効率よく進めましょう。
③ 良い変化をシェアして良い変化に気付きやすくする
「風土が悪い」という観念を揺るがすには、良いところも見せてあげること。良い変化をシェアし続けることで良い変化への知覚力が高まり、良い変化が増えやすくなります。
④ 常に可能性(強みetc.)に焦点を当て続ける
この姿勢が最も大切です。ぼくらは問題に目が行きがちですが、大変で困難なことがあっても、メンバーやチームの可能性(強みetc.)に焦点を当て続けましょう。
⑤ 「組織にとって」よりも「メンバーにとって」を重視する
メンバーがその気になって動くには、一人ひとりにとってのメリットが必要です。組織目標よりメンバーのメリットが先。メンバーに役立つことを増やせば、組織目標の達成にもつながる道筋をつくりましょう。
⑥ 努力や工夫を労い、力を引き出す
良い変化は続いてこそ風土改善につながります。メンバーが良い変化を続けていくには、努力や工夫を労われる機会が大事です。
⑦ あるものを活かすアプローチをとり続ける
足りないものを埋めるやり方ではなく、今あるものを活かして広げていくアプローチで進めましょう。組織風土改善では、このアプローチが圧倒的に有効です。
