「ふりかえりをやっているけど、毎回同じ反省のくり返しで終わる」「問題点ばかり出てきて、チームの雰囲気が暗くなる」。ふりかえりの場にこんな課題を感じていませんか?
ぼくのチームでも、かつてはふりかえりが「反省会」になっていました。何がダメだったか、なぜ失敗したか。そればかり話していると、チームのエネルギーがどんどん奪われていきます。
そこで取り入れたのが、解決志向のふりかえりです。問題の原因追求ではなく、うまくいっていることや望む未来に目を向ける。それだけで、ふりかえりの場がチームの成長を加速させる時間に変わりました。
ふりかえりが形骸化してしまう原因は?
多くのチームで、ふりかえりが形骸化する理由は明確です。「問題の洗い出し」に偏りすぎているのです。
一般的なふりかえりでは、「今期の課題」「改善すべき点」「失敗の原因」を話し合います。これ自体は悪いことではありません。でも、毎回このパターンだけだと、チームの会話は後ろ向きな話題で埋め尽くされます。
ふりかえりの場で後ろ向きな話題ばかりが出ると、メンバーは「またダメ出しの時間か」と感じるようになります。発言が減り、本音が出なくなり、形だけの場になっていく。これがふりかえりの形骸化です。
あなたのチームのふりかえりでは、後ろ向きな話題と前向きな話題、どちらが多いですか? もし後ろ向きが圧倒的に多いなら、バランスを変えるだけでふりかえりの質は大きく変わります。
解決志向のふりかえりとは何か?
解決志向のふりかえりとは、「何がダメだったか」だけでなく「何がうまくいっているか」「どこに向かいたいか」を同じ重みで扱うふりかえりです。
企業活動はPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(検証)→ Action(次の行動)のサイクルで動いています。ふりかえりはこのCheckとActionにあたります。
従来のふりかえりでは、Checkの段階で「問題」にばかりフォーカスします。解決志向のふりかえりでは、Checkの段階で「うまくいっていること」にもしっかりフォーカスするのです。
うまくいっていることを見つけて言語化することで、チームの中に「ぼくらにはこういうチカラがある」「こういうやり方ならうまくいく」という自覚が生まれます。そして、その自覚が次のActionの質を高めるのです。
3つのトークとは何か?
解決志向のふりかえりでは、3つのトークを使って対話を組み立てます。これはSFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)の対話手法をもとにしたものです。
① ゴールトーク ~望む姿を描く~
まず最初に、「望む未来の姿」を明確にする対話です。
「次の期末までに、チームがどんな状態になっていたら最高ですか?」
「この仕事が理想的にうまくいったら、どんな景色が見えますか?」
いきなり問題の話に入るのではなく、まず「どこに向かいたいか」を全員で共有します。目的地が明確になると、そこへ向かう道筋も見えやすくなります。
ポイントは、できるだけ具体的にイメージすることです。たとえば「売上を上げたい」ではなく、売り上げが上がった後に「何がどう変わったか」、場面が思い浮かぶように想像します。「お客様から『ありがとう』と言われる場面が増えている」「メンバーが自分から提案を出してくる」など。こうやって情景として描いておくと、売り上げが上がっていく(解決の)兆候を捉えやすくなり、さらに前向きに取り組める様になります。
ここからが大事なのですが、この「望む未来の姿」に感情的なつながりを感じられるかがカギです。
望む未来の姿の中に、メンバーや管理職それぞれの「極めて個人的な興味関心」が含まれていることがとても大切です。「組織のあるべき姿」のような、形だけを装ったゴールイメージとは違います。一人ひとりが「これは自分ごとだ」と感じられる未来像であることが、ゴールトークの本質です。
② サバイバルトーク ~大変な中でもやれていることを認める~
次に、「困難な状況の中でもがんばっていること」「踏ん張っていること」に目を向ける対話です。
どんなチームにも、うまくいかない時期はあります。そんなときにメンバーに「何がダメだったか」と問い詰めるのではなく、「大変な中でもやれていること」を認めることが大切です。
「このプロジェクト、厳しい状況が続いているよね。その中でも品質を維持できているのは、みんなが踏ん張ってくれているからだよ」
こうした言葉が、疲弊しかけたチームのエネルギーを回復させます。困難のただ中にいるメンバーにとって、「あなたのがんばりは見えている」という言葉がいちばんのチカラになるのです。
③ プログレストーク ~小さな進歩を見つける~
そして、「前回からの小さな進歩」を見つけて共有する対話です。
「今の状態を10点渀点でいうと何点?」「前回のふりかえりのときと比べて、少しでも進んだと感じることはある?」
大きな変化は目につきやすいですが、日々の小さな進歩は見過ごされがちです。でも、チームの成長は小さな進歩の積み重ねです。それを意識的に拾い上げることで、「ぼくらは前に進んでいる」という実感がチーム全体に生まれます。
たとえ1点の進歩でも、「その1点はどうやって進んだの?」と掘り下げると、チームの中にある工夫やチカラが言語化されます。それが次の行動のヒントになるのです。

コンプリメントの効果と使い方は?
3つのトークと合わせて大切なのが、コンプリメントです。コンプリメントとは、メンバーのがんばりや工夫を認めて言葉にすること。前の記事で「認める言葉」としてお伝えしたものと同じです。
ふりかえりの場でコンプリメントを使うと、場の空気が変わります。
「今期、お客様対応が丁寧になっていたのは、○○さんが率先して動いてくれたからだよね」
「あのトラブルのとき、冷静に対処できたのは日頃の準備があったからだと思う」
コンプリメントには3つの種類があります。
称賛する:成果や行動を直接認める。「よくやった!」
労う:プロセスや努力を認める。「大変だったよね。よく頑張ったね」
励ます:今後への期待を伝える。「この経験を活かして、次もきっとうまくいくよ」
この3つを状況に応じて使い分けることで、メンバーは「自分は認められている」「自分の努力は無駄ではない」と実感できます。その実感が、次のチャレンジへのエネルギーになります。
ふりかえりのやり方を変えたら何が起きたか?
ぼくのチームでは、ふりかえりのやり方を解決志向に変えてから、明らかな変化が起きました。
まず、メンバーの発言が増えました。「反省会」だった頃は発言するメンバーが限られていましたが、「うまくいっていること」から話し始めるようにしたことで、全員が何かしら発言できるようになりました。
次に、次のアクションが具体的になりました。問題点だけを話し合っていた頃は「気をつける」「頑張る」といった漠然とした改善策しか出ませんでした。でも「うまくいっているやり方」を言語化することで、「このやり方をあの場面にも応用してみよう」という具体的なアクションが出るようになったのです。
そして何より、ふりかえり後のチームの雰囲気が明るくなりました。「次もがんばろう」という前向きなエネルギーを持って現場に戻れるようになったのです。
よくある質問
Q. うまくいっていることばかり話していたら、問題が放置されませんか?
解決志向のふりかえりは問題を無視するものではありません。ゴールトークで「望む姿」を明確にし、プログレストークで「現在地」を確認する中で、取り組むべき課題は自然と浮かび上がります。ただし、問題を「叩く」のではなく、「望む姿に近づくために何ができるか」という方向で考えるのが特徴です。
Q. 3つのトークはどの順番で使えばいいですか?
基本はゴールトーク → サバイバルトーク → プログレストークの順です。まず望む姿を共有し、次に今の頑張りを認め、そこから小さな進歩を見つける。この流れが最も自然で効果的です。ただし、状況に応じて柔軟に順番を変えても構いません。
Q. ふりかえりの頻度はどれくらいが適切ですか?
理想を言えば、毎日ふりかえる機会があるとよいです。短い時間でもよいので、できるだけ多く解決志向のふりかえりの機会をもちましょう。解決志向のふりかえりをくり返していくと、メンバーは会議に出たり、資料を作成したり、アイデアを考えるなどの仕事を進めるとき、少しでも仕事を進捗させることを意識してくれるようになります。メンバーはその進捗を報告(解決志向のふりかえり)することを楽しみにしてくれます。
