この記事でわかること
- 評価面談が気まずくなる理由
- 「なぜこの評定なのか」から始めない伝え方
- やってきたことの意味を伝える3つの問い
- 希望を持って終わるための締めくくり方
評価面談で部下が納得してくれない。伝えたいことがうまく伝わらない。半期に一度のこの時間を、憂うつに感じている方は多いと思います。
ぼくは逆に、評価面談は一年でいちばん幸せな時間だと思っています。理由は、伝え方を変えたからです。
この記事では、実際に自分の面談でやっていることを書きます。
評価面談が気まずくなるのはなぜか?
原因は評定そのものではなく、話す順番にあります。
多くの面談は「なぜこの評定なのか」から始まります。すると、できなかったことの説明が中心になる。相手は守りに入り、こちらは言い訳を聞く役になり、お互いに消耗して終わります。
ぼく自身、若い頃は「評価」というコトバに「批判」という印象を持っていました。やたらと問題点ばかり指摘されるからです。「ここはダメだったから高い成績はつけられない」と、高い評価をつけられない理由としてダメだったことを持ち出される。評価が先にあって、後からダメなところを探しているんじゃないか。そんなふうにひねくれて考えていた時期もあります。
「なぜこの評定なのか」の説明から始めない
評定はつけますし、フィードバックもします。ただ出来なかったことを追及するような説明はしません。
目標を達成できたかどうかには、いろいろな要因があります。だから出来た・出来ないにフォーカスしない。問題については日々の業務の中でさんざん話してきています。わざわざ評価面談で出来ていないところを持ち出すのは反則だと思っています。
代わりに伝えるのは、こういうことです。
「あなたは、この半期、こんなすごいことをやってきたよ。それは会社、組織、同僚メンバー、上司のぼくにとって、こんなに素晴らしい意味があるよ。そんなすごいことが出来たのは、あなたのこんな考え方や行動があったからだよ。次の期も期待してるよ」
考えるのは大変です。でもそれ以上に、ぼくとメンバーにとって幸せな時間になります。
できたこと・努力・工夫を聞く3つの問い
面談の前半は、こちらが話すのではなく聞きます。使うのは3つのプログレス・トークです。
① プロブレムコーピング・トーク(大変ななかで、どう乗り切ったか)
うまくいかなかった時期に、どう対処してきたか。ここには本人も気づいていない工夫が眠っています。
② サクセス・トーク(うまくいったこと)
小さくてかまいません。本人が当たり前だと思っていることほど、拾う価値があります。
③ ソリューション・トーク(どうやってそれができたか)
やり方を本人に言語化してもらう。ここで自分の持っているチカラが本人の中で言葉になります。3つのトークの詳しい使い方はこちらです。
こうした面談を繰り返していると、メンバーは評価表に自分がやってきたことを「びっしり」書いてくるようになります。期初に設定したテーマ以外のことも含めて、たくさん書いてくる。見てもらえるとわかっているから、書くのです。
3つのコンプリメントで、意味を返す
聞いたあとは、こちらから返します。認め方には3つの形があります。
直接(上司が当てる)
観察して感じた貢献を、エピソードと一緒に伝える。抽象的な称賛ではなく、いつ何を見たかを具体的に。
間接(他人が当てる)
「営業の◯◯さんがこう言っていた」。第三者の言葉は、本人にとって別の重みを持ちます。
セルフ(本人が当てる)
「それ、どうやったの?」と聞いて本人に語ってもらう。自分で自分を認められた経験は、いちばん長く残ります。
実体験:やってきたことの意味を伝えた面談
あるメンバーは、その期にデジタルサービスの立ち上げに取り組んでくれました。ぼくらのグループが初めて取り組む分野で、当初はどう進めてよいか分からず嫌気がさした場面もありました。それでも出来たことに目を向けてスモールステップを重ねた結果、本人はこのテーマに関心を高めて没入していきました。
評価面談では、こう伝えました。
「デジタルサービスの立ち上げを今期手がけてくれましたね。情報システムについて門外漢だったと思うのですが、その分野の仕事を広げていきたいぼくらのグループにとって、メンバーみんなが見習うべき姿勢だと思います。さらにはDXを推進していく会社の戦略に大きく貢献しています。下期も一緒にデジタルサービスを進化させ、広げていきましょう。期待しています」
メンバーからは、こんなコメントが返ってきました。
「最初は大変でしたけど、アドバイスのおかげでここまでやることができました。キーマンは情報システムの担当者だったと思います。その人を捕まえて、自分の知らない技術や知見を教えてもらえたことがとても良かったです」
「あと、自分のことをよく観ていただいてとてもありがたいです」
こうしたフィードバックは、メンバーをよく観察できる上司にしかできません。まさに上司冥利だと思います。この面談の全文はこちらです。
実体験:評価される側で、本音を言った日
逆の立場の話もしておきます。ぼくが部長との評価面談を受けたときのことです。
ぼくが尊敬していた上司について、部長がこう聞いてきました。「訳のわからないことを言ってるから、あきれてるんちゃうか? 問題じゃのお。二人しかおらんけん、本音言ってみい?」
ドキッとしました。恥ずかしい話ですが、迷うより前に「ここは自分の立場を良くするために、部長の話にのっかろう」と決めました。
でも、そう思った瞬間にとても悲しい気持ちになったんです。自分が大切にしていることを失うんじゃないか。
ぼくは勇気をだして答えました。「あの方は部下想いですし、頼もしい先輩で尊敬しています」
部長は良い顔をしませんでしたが、「わかった、わかった、おまえはあいつが好きじゃけんのお」と笑って面談は終わりました。ほっとしたと同時に、清々しい気持ちになっていました。
評価面談は、評価される側にとっても自分の大切を確かめる場になりうる。だからこそ、上司の側の聞き方が効いてきます。この話の全文はこちらです。
希望を持って終わる
面談の最後は、次の期への期待で締めます。「次はどうしたい?」と聞き、本人の言葉で語ってもらう。
目標の達成・未達にこだわるのではなく、やってきたことの価値を伝える。それが次の半期への力になります。
よくある質問
Q. 低い評定をつけざるを得ないときはどうしますか?
評定は事実として伝えます。ただし評定の説明と、やってきたことの意味を伝える時間を分ける。順番は、意味を伝えるのが先です。理由の説明から入ると、そのあと何を言っても言い訳を探す会話になります。
Q. 「できたこと」が見つからないメンバーもいます
見つからないのではなく、見えていないことが多いです。日々の観察を評価面談のためのメモに残しておくと、半期分の材料がたまります。本人が当たり前だと思っている行動ほど、伝える価値があります。
Q. 部下が納得しないときは?
納得は説明の巧拙ではなく、見てもらえている実感から生まれることが多いです。エピソードを具体的に挙げられるかどうかが分かれ目になります。面談の場で急に用意はできないので、日々の観察がそのまま準備になります。

