尊敬していた上司のこと
もう20年以上前のことです。ぼくはある上司のグループで働いていました。彼はとてもまっすぐで、思ったことは発言し、即行動に移す人でした。
とてもとても温かく人情深い人でした。ぜったいに部下を悪者にしないし、部下だけでなく、弱い立場にいる人にいつも手を差し伸べていました。
一方で、仕事は厳しく、上層部であっても違っていることは違う、と直言します。だから直属の部長には煙たがられていたところはあったんじゃないでしょうか。
その上司がよく言っていた言葉があります。
「あんな(あのな)、優しいだけじゃあかんねん。でもな、追い込んでしまってもあかんねんな。51%の厳しさと49%の優しさや。これが大事やねん」
仕事中も飲みに行っても繰り返し話していました。
自分を試された瞬間
部長との評価面談の時。評価のフィードバックが一通り終わった後で、
「おまえは、あのマネージャーをどう思う?訳のわからないことを言ってるから、あきれてるんちゃうか?問題じゃのお。二人しかおらんけん、本音言ってみい?」
ドキッとしました。恥ずかしい話ですが、迷うよりも前に、光よりも早い速度で思考が回り、「ここは、自分の立場を良くするために、部長の話にのっかろう」と決めました。
でも、こう思った瞬間に、とても悲しい気持ちになったんです。この気持ちは何だろう。
「自分って何なんだ。部長の期待に応えるために、自分の立場を守るために、この場を無事しのぐために、思ってもないことを言うことで、自分が大切にしていることを失うんじゃないか」
言葉にすると、こんなことだったんじゃないかと思います。ぼくはその上司に何度も助けてもらったし、心から尊敬していました。だから部長が期待しているような答えはやっぱりできない。
ぼくは部長の問いかけに、ぼくなりに勇気をだして答えました。
「あの方は部下想いですし、頼もしい先輩で尊敬しています」
ぼくは思っていることを素直に伝えました。もちろん、部長は良い顔しませんでしたが、
「わかった、わかった、おまえはあいつが好きじゃけんのお」
と笑いながら評価面談は終了しました。ぼくはこの時、ほっとしたと同時に、なんだか清々しい気持ちになってたんです。おおげさですが、「ちゃんと自分の大切を大切にして生きることができた」と感じたんです。席を立ち、地面を踏みしめる感覚に力強さを感じたのを覚えています。
大切なものを大切に扱うことって勇気が必要なときもあるんだな。そんな体験でした。
勇気をだしてしたことは、きっとチカラになる!
自分の大切を、大切にする勇気。
立場を守るために本音を隠すか、大切にしていることを貫くか。ほんの小さな勇気でも、自分の大切を大切にできた経験は、地面を踏みしめる力強さになって返ってきます。
