解決志向の原点:「あるもの」から始める組織づくり

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疲弊した組織の風土改善を任された

当時ぼくは、メーカーの購買部にいました。世界的な資材高騰でメーカーは大打撃を受けていて、組織メンバーは必死に努力していたのですが、やってもやっても報われず、疲弊感でいっぱいでした。

ロジカルに分析した改善策が提示されても、声をそろえて「これで問題が解決できるとは思えない…」という状態。

すると、だんだん本音が出てきました。

「上司は部下を詰めるだけで、どうしたらよいか示さない」

「担当者は自主性がない。自分で考えて動いてほしい」

ベテランと若手の対立構造がくっきり。業績の悪さ、忙しさ、それに伴う余裕のなさが組織をギクシャクさせてしまっていたのです。

部長から「コミュニケーションの問題だ」と指摘があり、ぼくに組織風土改善の担当が命じられました。

「みんな頑張っている」のに、それが見えていない

このころ、ある若手メンバーが毎日上司に叱られ、辛そうにしているのが気になっていました。「月曜日に会社に来れているだけで自分はえらいと思う」と言っていたくらいです。

ぼくはその若手の状態をなんとかしたいという想いと、こんなにみんな頑張っているのだから、それを業績につなげたいという想いを風土改善にのせました。

成果を出さなきゃいけないのはわかっている。でも環境要因ですぐに成果が出にくい。一方、課題に立ち向かうなかで、たくさんの工夫や努力、同僚どうしのサポートが「ある」し、少ないながらも上司部下の間でも助け合いが「ある」のをぼくは見ていました。

そうした工夫や努力、助け合いが知られたり、認められたり、感謝されたりする機会が必要だと感じていました。

一人ひとりの話を聞いて、「認める言葉」を伝える

まず、担当者、マネジャー、部長、一人ひとりへのヒアリングを実施しました。目的は問題を把握することではなく、問題を聞きながらも「どうなったらいいか?」を引き出すこと。そしてこれまでの頑張りをしっかり労うことです。

特に部門の長である部長の話をじっくり聞くことは大事でした。はじめのうちはメンバーへの愚痴ばかり。でもその後、部長がどれだけ組織のために頑張ってきたかを聞き、しっかり労いました。

結局、2時間のヒアリングを3回実施。すると部長の発言が変わっていきました。

「仕事をプロ意識を持って、自主的に進めてくれるといいんだがなあ。わしはどうしたらいいのかなあ」

部長だって褒められたいし、認められたいのです。それを受け止めることで、変化に対して柔軟になっていきました。

すでに「ある」良いコミュニケーションを共有する

次に、すでにある「お互いに役立ったコミュニケーション」をアンケートで吸い上げて、月1回の全体会議で共有しました。例えばこんな内容です。

「部長が話をじっくり聞いてくれた」

「素朴な疑問を同じ目線に立って聞いてくれた」

「上司の考えや意見が聞けた」

「何も言わずに一緒に作業を手伝ってくれた」

こうした声を共有すると、組織メンバーは良い変化に気づきやすくなりました。「こんな変化があった」「あんな変化があった」と2回目以降のアンケートに記載してくれるようになったのです。

「風土改善なんて意味がない」というメールが飛んできた

しかし、23人のメンバーがいればいろんな意見が出てきます。あるメンバーからこんなメールが飛んできました。

「風土改善てなんですか?面倒なことから目をそらし事なかれ主義でいくことですか?一生懸命やってる人が我慢をしてる状態をそのままにしていいのですか?駄目なものは駄目ってきちっと上司の人が言ってくれないと。いまのままでいくらアンケートを行っても基本的なところでの改善ができなければよくならないと思います。なので今回はアンケートに答えることができません」

これにはガックリきました。「みんなのために一生懸命やってるのに…」という思いも込み上げてきて、一人で抱えきれなくなりました。

そのとき、ある人に相談したところ、こう聞かれたのです。「大変だと思うけど、風土改善がうまくいったあとの状態って、どんな姿だと思う?」

「はっ」としました。そしてぼくはこう答えています。

「自分のメッセージをしっかり受け止めてくれて、一緒になって考えてくれる状態。そうだよね、そう思うことは当然だよね…とまずは受け止めてくれる組織です」

まずは、目の前の一人の話を聞く

その後すぐに、メールをくれたメンバーの話を聞きました。実は同じ立場の人が業務中に私用のネットを見ていることが多く、不公平感を感じていることがわかりました。そんな状態で「良いところだけ見ましょう」と言われても、協力したくないのは当然です。

とにかくじっくり話を聞きました。すると、「もっとスキルアップして会社に貢献したい。一緒に仕事をしている先輩がスキルを教えてくれるのでありがたい」と前向きな話になっていきました。だんだんと風土改善も前向きに捉えてくれるようになり、アンケート報告会の出席もOKしてくれたのです。

悪者をつくらない。「あるもの」に着目する

こうしたピンチがいくつかあり、周囲の助けも借りながら進んでいったのが正直なところです。1回目のアンケートも23名中、回答は14名でした。「やる気ないなあ」と一瞬は思いましたが、14名の回答をしっかり活かすようにしました。

この取り組みで大事にしたのは、既にある「お互いに役立ったコミュニケーション」に着目したこと。そして、悪者をつくらないこと。悪者がつくられてしまうと、風土はかえって悪化してしまいます。

「会社に来るのが嫌じゃなくなりました」

風土改善はぼくが他部署へ異動する直前までの3ヶ月間実施しました。道半ばで後ろ髪を引かれる想いでしたが、この取り組みをやってよかったと思った瞬間がありました。

異動のために机を整理しているとき、あの辛そうだった若手メンバーがぼくのそばに立って、こう言ったのです。

「会社に来るのが嫌じゃなくなりました。ありがとうございました」

これを聞いたとき、涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。組織風土改善に取り組んでよかったと心から思いました。

みんなの頑張りを、組織の力に。

問題を追及するのではなく、すでに「あるもの」に目を向ける。それだけで、組織は変わり始めます。

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