新しい挑戦に手を挙げたメンバー
ぼくのチームには、ある外国出身のメンバーがいます。日本語に不自由はありませんが、細かいニュアンスになると不安があるようで、内容理解を確実にするためにぼくに確認することがあります。
このメンバーは成長意欲が高い人です。「自分なら出来るし成長につながる」と思えば積極的に取り組みます。一方で「自分に出来そうもない」と思うと、依頼された仕事を断ることもあります。周囲からは「向上心がない」とか「協力意識が足りない」と誤解を招くこともありました。
チームには、新製品プロジェクトのサブリーダーを何度も務めてきた別のメンバーがいます。さまざまなタスクに目配りし、全体運営の流れも把握してくれています。
外国出身のメンバーは、そのサブリーダーの活躍を見て「すごいです!」「事業部横断の取り組みやってくれてありがとうございます!」と賞賛や感謝の言葉を伝えていました。
ぼくはこの様子を見ていて、このメンバーもサブリーダーのように活躍したいんじゃないかと感じていました。
挑戦のスタート
来年春に向けて新製品プロジェクトがスタートしました。サブリーダーにはこれまで以上にフロントに立ってもらいます。そして外国出身のメンバーには、試作パートを担当してもらうことにしました。
「新製品プロジェクトの試作パートやってくれないかな?」
「いいですよ。いつも全部やってもらっているので、申し訳ないなと思っていました。やります」
「ありがとう。少しずつでいいから、プロジェクト全体をリードできるようになって欲しいんだよね。期待しています」
「うちのチームにとって新製品のプロジェクトは大事な仕事なので理解しています」
こうして挑戦が始まりました。
仕事を抱え込んでしまう
試作パートは営業の担当者と連携しながら進めます。ただし細かい作業が多く、すべてを役割に落とし込んではいません。進めながらお互いがやりやすい形で分担していく前提でした。
ただ、このメンバーは曖昧な状態が苦手です。ひとつひとつの作業に役割がないと動きにくいようです。今回は完全な理解や納得を目指すより、仕事を進める中で問題が起きたら軌道修正していこうと考えていました。
ところが、試作パートを進めているうちに、他部署の仕事までやり始めてしまいました。仕事量も増えますし、わからないことも増えていきます。
ある日、電話がかかってきました。
「ここまでやる必要ありますか!数量の件でプロジェクトメンバーから問い合わせがたくさんきて困ってます。営業の担当者がやってくれないんです!私ばかり仕事を押し付けられてる感じです」
「チーム朝会でこの件を話してくれる?メンバーから今後の進め方についてアドバイスもらおう」
チームの支えに気づく
チーム朝会で、そのメンバーはプロジェクトで進めている試作パートについて思っていることを話しました。
「試作パート進めてるんですけど、数量の調整まで他部署とやっているんです。営業の担当者は何もしないんです」
サブリーダーがすぐに声をかけました。
「試作パート進めてくれてありがとう。本来なら営業が進んで数量調整やるべきですよね。もう関わらなくてよいと思う」
ぼくも補足しました。
「そうですね。今後は数量調整に関わらなくて良いです。丁寧に回答してくれたので、相手も進め方を理解したと思います。ありがとう」
そのメンバーの答えが印象的でした。
「ありがとうございます。数量の件は、今後関わらないようにします。このチームで本当に良かったです。安心して進められます!他のチームではひとりぼっちで仕事を進めてつらくなって休んでしまう人が多いと聞いてます。この間も一緒に仕事をしている他部署の若い人が休んでしまいました。他部署の若い人が私たちのチームと関わる時は、出来るだけ支えてあげたいと思いました。私たちにはこのチームがあるので」
チーム朝会が育てたもの
ぼくのチームは朝会を毎日30分から1時間程度やっています。メンバーは業務上の課題や問題点、うまくいったことがメインですが、自分の体調や家族のことも話します。怒っていること、不安なこと、悔しかったこと、うれしかったことも話します。話したいことなら何でもいい。メンバー全員で聞いていきます。
約2年半の間、チーム朝会をやってきて感じるのは、仕事とプライベートと感情は地続きになっていて、どこかに詰まりがあると仕事がうまく流れないということ。
だから、メンバーからこうした多面的な情報を表に出してもらって、チームで共有します。うまくいっていることがあれば「すごいじゃん!」と伝え合い、問題について解決策が見えなくても一緒に悩み、怒りや悔しさがあれば共感し合い、大変な思いをしていれば応援し合い、手伝えることは申し出る。チームがメンバーに寄り添い支える場です。
今回のことで、ぼくが目指すチームのあり方が形になっているのを感じることができました。
大丈夫。あなたを支えるチームがある。
一人で抱え込まなくていい。困ったら声を上げていい。そう思える場があれば、人は安心して挑戦できます。そんなチームをつくることが、マネージャーの仕事です。
