社内表彰にノミネートされた
あるシニアメンバーが進めてきた環境テーマの仕事が、社内のベストプラクティス賞にノミネートされました。部門長の推薦です。
ぼくはこれまで一緒に積み上げてきた2年の道のりを思い返しながら、
「ここまでくるとは正直思っていなかったなあ…」
想像以上の結果への驚きと、評価されたことへの喜びがこみ上げてきました。
「引き取ってくれないか」と言われたメンバー
このメンバーがぼくのチームに来る前の話です。当時の上司から「仲が良さそうだから引き取ってくれないか」と相談を受けました。仕事をしないし、報連相もまったくないというのです。
一緒に働いていた人にも話を聞きましたが、答えは同じ。一言で言えば、居場所がなくなっている状態でした。
ぼくとは飲みに行く仲で、グルメで話も楽しくて、良き先輩です。仕事面では確かに良い話は聞いていませんでしたが、ここまでの言われようはひどいなと思いました。
チームに来てから前の部門のことを聞いてみると、「上司や同僚は何を言ってもこっちの話を聞かない。だから話もしないし、聞かれても答えなかった」というのです。気持ちはわかります。でも、どっちが本当かはわかりません。
やっぱり評判通りだった
チームに加わってみると、前の上司が言っていた通りでした。仕事を任せても進捗の報告はないし、聞いても「言う必要はない」と返ってきます。しつこく聞くと、「途中で何か言われると、思ったように仕事が進まない」ということでした。
ぼくの上司からは「何をやってるんだ?他部門からクレームが来てるぞ!なんとかしろ!」と何度も言われました。そのたびにそのメンバーと話すのですが、「相手が悪い」の一点張り。ぼくも上司とメンバーの間に挟まれて疲弊していきました。
「このままでは前の部門と同じことになってしまう…」
環境テーマで「主役」になってもらう
そんな状態が続いていたところに、グループでSDGs関連の環境テーマを担当することになりました。そのメンバーはサーファーで、海岸のゴミ拾いをやったことがあると聞いていたので、関心があるのではないかと思ったのです。
最初は「テーマはいいけど報告の資料づくりは嫌だ」と言うので、資料づくりは手伝う前提で引き受けてもらいました。まずはこのテーマを持ってもらい、主役になってほしかったのです。
毎朝のチーム朝会で環境テーマの進捗を共有してもらい、メンバーの活動をチーム全体に知ってもらうようにしました。月1回の成果報告会でも、嫌がりながらも2ページが5ページへ、5ページが10ページへと資料作成の量を増やしていきました。
半年もすると、「環境テーマならあの人」と社内で認知されるようになり、本人も自分の仕事だという自負を持ってくれるようになりました。
まさかの異動願い
ところが、環境テーマが軌道に乗ってきた矢先に、そのメンバーが以前いたデザイン制作の部署へ異動願いを出したのです。ショックでした。
話を聞くと理由がわかりました。
「俺、デザイン制作の仕事で会社人生を終わりたいんだよね。でも環境の仕事は好きだから、異動がダメだったら頑張るよ」
この人にとってデザインの仕事は本当に大切なんだ。ぼくは初めてこのメンバーが心から大切にしていることを知ることができました。
大切な仕事でチームに貢献する
結局、異動は叶いませんでした。しかし、ぼくはこの機会にチームメンバーに対するデザインのアドバイスをお願いしました。ぼくのチームは外部へデザイン制作の依頼をする仕事があるので、彼のアドバイスはとても役に立ちます。
朝会でメンバーがデザインを共有し、それについてアドバイスをもらうようにしました。的確で、押し付けがましくなく、でも伝えるべきことはしっかり伝えてくれます。メンバーは感謝を伝えるようになり、そのシニアメンバーは頼りになる存在に変わっていきました。
環境テーマでもデザインアドバイスでも、「主役」を張ってくれたのです。
ブロンズ賞を受賞
環境テーマは自社だけでなく他社を数社巻き込む大きなプロジェクトに育ちました。他社との調整はぼくが引き受け、メンバーには環境対応の実務を進めてもらう役割分担です。
社外へのリリースが完了し一区切りがついたとき、部門長から社内表彰にエントリーしたいと相談がありました。メンバーは快諾したものの、
「エントリーシート書くの面倒くさいなあ。書いといてよ」
「さすがにそれは無理です!自分で書いてください!」
「わかったよ(笑)」
相変わらずなところもありますが、結果はブロンズ賞を受賞。「問題児」と言われていたメンバーが、社内表彰される日が来るとは。
組織がつくった問題は、組織で解決する
この経験を通じて強く感じたことがあります。
前の部門でそのメンバーが「問題児」とされていた状況は、メンバー個人の問題だったのでしょうか。もしかしたら、前の部門の組織がつくり出してしまった「問題」だったのかもしれません。
だとすれば、「本人を改善する」のではなく、「組織で解決する」ことが必要だったのだと思います。
ぼくのチームでやったことは、肯定し続けること、主役になれる場をつくること、やっていることを周囲に発信すること。組織の力でメンバーを活かし、メンバーの力で組織を強くしていく。そうした循環が、結果としてこの成果につながったのだと思います。
前の部門の上司に会うたびに聞かれます。
「あいつ、ちゃんと仕事してるか?」
ぼくは清々しい気持ちで答えています。
「ちゃんとやってますよ」
一人ひとりの持ち味を、チームの力で活かそう。
「問題のある人」なんて、本当はいないのかもしれない。問題をつくったのが組織なら、解決するのも組織の力です。
