またまた危機がやってきた
ぼくらのチームはデジタル業務を本格的に進めていく年を迎えていました。デジタルグループと協働することでデジタル業務を進めていく計画です。特にデジタルグループのマネージャーがキーマンになります。
そんな中で、ある朝、部長がマネージャー陣に緊急で招集をかけ、ためらいながらこう言いました。
「デジタルグループのマネージャーが退社します」
驚きを飛び越えて絶望まで一気に駆け抜けました。デジタルについて知見が深く、デジタル業務を一手に担っているマネージャーが居なくなる。まったく予想もしてなかった事態でした。
この数年の間に、部門ごと異動したとき、コロナ禍に突入して仕事のやり方を大きく変えなければいけなくなったときなど、苦境はたくさんありましたが、メンバーと一緒になんとか乗り越えてきました。
だけど、今度はダメだ。これまでやってこれたのは運がよかった。今度はもう無理。そもそも仕事について門外漢の部分が多すぎる。さすがに心が折れそうになりました。
でも、落ち込んでもいられない。退社日は間近。今後どうやって進めていこうか。何かないか、何か力になるものがあるんじゃないか。考える日々が続きました。
できることから、感じていることへ
部長からは「リーダーシップとってデジタル業務も進めてください」と一言。やっぱりそうなるか。覚悟はしていましたが、ずっしりと重いものを渡された気がしました。
退社するマネージャーには若手の部下がいます。異動してきて2年目の女性メンバーです。
もちろんその若手メンバーにマネージャーの代わりは期待できません。しかし仕事は一回りしているし、ぼくらよりはデジタルの知識や経験を持っている。外部の代理店や制作会社との関わりもあり、外部の動かし方にも慣れてきている様子でした。
「この若手メンバーとの進め方がカギになるかなあ。でも彼女にできることは限られているしなあ」
できることだけでなく、彼女は何をどう感じているのだろうか。大切にしていることはどんなことか。それを知りたくなりました。
若手メンバーの悩み
その若手メンバーは、前のマネージャーとうまくコミュニケーションがとれず悩んでいました。マネージャーは一方的に話をして指示するタイプだったから、彼女はそれを受けて作業を進めるだけでした。
「私はここに来る前は、自分で考えたことを実行していました。ここに来たら、それは否定されてしまい、ちゃんと言った通りやれと言われてしまいます。どうしていいかわからなくなってしまいました」
時々リモート越しに見える彼女の表情は暗く、心配していました。
そこへきてマネージャーの退社が勃発。代わりのマネージャーはすぐに来ないし、仕事の負荷が高まることは明らかです。下がっていたモチベーションはさらに下がっていきました。なにより「見捨てられた」という感覚が大きいようでした。
すでにある力に気づく
これまで、その若手メンバーとぼくのチームメンバーは仕事で関わることがありました。彼女はわりと思っていることを言葉にする人です。
「私、人と相談しながら仕事をするのが好きなんです。入社してすぐの研修は、いろんな人と交流があって楽しかったんです」
「チームの皆さんと話すと癒されるんですよね」
運よくぼくのチームメンバーと相性がいい。このことは実は大きな力なんじゃないか。彼女は人と相談しながら仕事をすることが好きだし、うちのメンバーも彼女をかわいがっている。メンバーは彼女からデジタル業務を気持ちよく学んでいけるんじゃないか。そうしてデジタル業務を進める新しい形をつくっていけるんじゃないか。
彼らを見ていてそんな想像ができたことで、ぼくにも力が湧いてきました。
懇親会から生まれたつながり
部内懇親会があったとき、その若手メンバーとチームメンバーは楽しそうに話をしていました。
少し仕事の話になったとき、「チームでやっているMAC講習に参加したい」と申し出てくれました。マネージャーからの仕事引継ぎを含め、めちゃくちゃ忙しい中です。
どうしてぼくらとMAC講習を受けようと思うのか。それは、ぼくらとの交流の場を持つことが彼女にとって「大切な時間」なんだろうと想像します。大切にしていることが満たされる時間の一コマになるのでしょう。
チームメンバーとの相性がよかったこと、MAC講習に参加してくれることになったこと。これが今後デジタル業務を進めるための大きな力になると感じました。
絶望から一歩を踏み出す
ぼくのチームに育った「支え合う力」を、この若手メンバーにも広げていって、助け合いながらデジタル業務を進める新しい形をつくっていきたい。そういうイメージを自然と描くことができました。
このイメージが、絶望と迷いの中にいた状態から、力強く次の一歩を踏み出す勇気を持たせてくれました。
危機のときこそ、「できること」だけでなく「感じていること」に目を向ける。相手が何を大切にしているか、何に心を動かされているかを知ることで、解決の糸口が見えてくることがあります。
「感じていること」へ目をむけて、解決へつなげよう。
危機のときは「何ができるか」だけを考えがちです。でも「何を感じているか」「何を大切にしているか」に目を向けると、すでにある力が見えてきます。そこが解決のはじまりです。
