キャリアチェンジ制度はあるけれど
ぼくの会社にはキャリアチェンジ制度があり、希望する部署へ転出することができます。しかし転出希望があっても申請を人事に出す人は稀です。なぜなら、申請自体を上司が止めてしまうからです。転出されたら仕事の穴埋めが大変ですし、場合によっては上司の評価が下がります。
今回はその転出にまつわるエピソードです。
7年越しの連絡
先日、営業部門のある人から「グループにキャリアチェンジしたいんです」と連絡がありました。ぼくのチームは以前1名転出してしまったので1名不足の状態でした。それによるぼくの負荷が高まり、人が欲しくてたまらない状況です。
だけど、あまり嬉しくない。なぜなら、その人は7年前からぼくのチームへ来たいと言っていましたが、言うだけで転出希望を出したことがなかったのです。興味を持ってくれるのは嬉しいのですが、もう期待しないことにしていました。
今回も言っているだけだろうと思ったのですが、なんだか様子が違う。会社でちょっと会って話したいというので、ひと気の無いところで軽く立ち話ししました。言っていることは過去と変わらないのですが、落ち着き具合、顔つき、特に目が違うのです。キャリアチェンジ申請の締め切り3日前のことでした。
機会は熟したのか
じっくり話を聞きたいと思い、二人で会う時間をとりました。まずは本気なのかを確認し、本気ならキャリアチェンジ申請の文面や面談への備えを助言しなければなりません。キャリアチェンジは狭き門です。転出の動機や、転出先でどんな貢献ができるのかを根掘り葉掘り聞かれます。
「キャリアチェンジの話、これで何回目かな」
「昔、キャリアチェンジしたいと言っていたときは、正直営業が嫌で出たいと思っている部分もありました。それもあって踏み切れなかったんです」
「7年前からうちに来たいって言ってたじゃん。今回はこれまでとどう違うの?」
「今の部署で納得いくレベルの成果を出せたので、そろそろいいでしょって感じです。十分に貢献できたし、自分で納得できました」
「どういうこと?」
「ん~」
「機が熟したってことかな?」
「機が熟した。そうです。キャリアチェンジ申請して、仮にダメだとしても納得できるとこまできました」
本気度を確かめる
「上司へは話したの?」
「話しました。あまり良い顔しませんでしたけど、自分の人生だから申請出したければ出せばと言われています。本気だということは理解してくれたようです」
ここは気になるところでした。上司が理解してくれていないと、上司から人事への申請が進まない。上司の納得レベルについてさらに聞きました。
「理解してくれてるってどういうこと?」
「営業が嫌で出たいとかじゃなくて、今後のキャリアを考えてのことだと理解いただいてます。今期も頑張って期待されてた成果を出すことができましたし。ちょっと申し訳ない気持ちもありますが、自分の人生なんで。後悔したくないって気持ちが強いです」
上司の期待にしっかり応えてきたし、本気度も伝わっているようで、上司の申請はクリアできそうです。
「ご家族には話した?」
「話しましたけど、東京に住み続けられるならぼくのキャリアはあまり関係ないです(笑)」
仕事観を聞かれて
「ちょっと聞きたいんですが、仕事をするモチベーションはなんですか?仕事観というか、その辺も聞きたいです」
突然聞かれて驚きましたが、普段思っていることを素直に話しました。
「メンバーの成長と、一緒に成果を出す過程を楽しむことかな。50歳を過ぎてからメンバーや周囲に貢献したいという気持ちが強くなってきました。異動してきたら全力でサポートするから、なんとかこちら岸までたどり着いてください」
「ありがとうございます!」
この後は仕事の詳細を説明して解散しました。あとはその人の頑張りしだいです。人事面談まで通れば、ぼくの上司と結託して人事への働きかけを進めていきます。受け入れるこちら側もベストなタイミングでした。
機が熟すということ
そして先日、無事にキャリアチェンジ申請が人事部へ通ったことを確認しました。第1段階クリアです。
7年越しのキャリアチェンジ申請。こんなに時間がかかるものかと思いましたが、機会が熟すとはこういうことなのだと実感しました。無理なく自然と事が進んでいきます。
その人は、熟した機会をつかみ、人生の転機へつなげようとしています。
マネージャーとして学んだのは、メンバーの変化を「待つ」ことの大切さです。7年前と同じ言葉でも、背景にある覚悟は全く違っていました。それを見分けるには、日頃からの関わりと、相手の目をちゃんと見て話を聞くことが必要です。
機会をじっくり待って、熟した機会を人生の転機につなげよう。
すべての変化にはタイミングがあります。焦って動くのではなく、機が熟すまで待つ。そして熟したときに全力でサポートする。それがマネージャーにできることです。
